剣の速さについて
以前に抜刀の速さについて、当会員と話したことがありました。
始めは皆さん、スピードへの憧れもあり、電光石火に勝敗を決するという神業的なイメージを居合に持っている人が多いようです。
かつて学生の頃に講談社野間道場での、持田十段の剣道を拝見しましたが、確か80歳を超えた先生が、気鋭の一流剣士の俊敏な攻撃にたやすく応じていたのを、今でもよく覚えております。
私が先生に相手していただいた時、傍目では緩やかで決して速くは見えないのに、打たれて初めて気づく程の異次元の速さを体験しました。客観的な速さと実際に相対した時との違いを実感しました。
居合では、物理的な速度は、正しい剣理に従っていけば、誰でも自ずと速くなります。でも、肝心なのは表面的に目に映るものではなく仮想敵を想定した主観的な速さです。
これは、比喩的に言っているのではなく、あくまでも、相対した敵に如何に速く剣を到達させるかという実利的な速さのことです。
巷では、鞘から剣を抜き出す速さや見た目の俊敏さをアピールする向きもあるようですが、本質的な速さは、なかなか視覚では捉え難いものです。「目にも止まらぬ…」とはこのことかも知れません。居合での真の速さはとても奥深いものです。 会水