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仮想敵について

居合道では、剣道のように実際に相手がいるわけではなく、仮想の敵を想定して技を行います。しかし、実物の敵がいないからといって、自由気ままな形だけのものでは技とは言えません。そして、技を観る方にも敵の存在を感じさせるようなものでなければなりません。そうするためには、演武者の意識の置き所が大切になってまいります。

通常、居合道は一人で行い、マイペースで自由に出来るものではありますが、対敵の技であることを忘れてしまうと、居合道の本義から逸れて、形だけの舞になってしまいますので、技の中には常に仮想敵がいなければなりません。

私の体験ではありますが、更に心に留めておきたいと思うことは、技は主観的に自分の内面から繰り出すべきものであり、そこに少しでも客観的な思考が入ってしまうと意識が分散してしまうということです。

つまり、自分の姿を客観的に観察するかのような意識で行う稽古では、集中力が養えません。例えば、鏡で技をチェックする等の稽古は、習慣化しない程度に留めるとともに、通常の稽古とは厳格に区別するべきだと思います。そうしないと、常に自己の技を客観視するようになってしまうからです。居合道はいつも主体的でありたいものです。

数年前、宮本武蔵の二天一流の方の「居合には戦気がない」という言葉を聞きましたが、それは、仮想敵が見えない居合を指したものかも知れません。

私は先師から、仮想的を見ない居合は偽物、死物だとも言われてまいりました。それを肝に銘じて、実戦に則した本物の技を目指したいと思います。会水

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