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技の本質を求めるということについて

居合道は、先師が実戦の中で模索し会得した技を流派の掟として伝書・口伝として残されたものである。それは、実戦に基づいたものであるが、そのまま適用するというより、本質的な剣理を体系的に指導理念としても残すため組まれ、実地時の応用に資するべきものと思う。

つまり、技の本質が組み込まれているものであるから、それを学には、先師が残された形に私見恣意を交えずに、伝承された技そのままを追求することが本質を目指す稽古となり、それに向かう過程での変化は決して改ざんにはならず、むしろそれが進歩というものではないか。

したがって、実戦経験のない現代人が自己解釈によって形(技)を変形変質させることは居合道の本質から逸脱させることになるということに異議のある人はいないと思う。

それらを踏まえ、技の本質を求めるとはどのようなものなのかということについて考えてみたいと思う。

居合道にも技の優劣を競う競技会というものでは、剣道のような実物の敵を置かない居合道では、点数により評価することとなるが、審査基準がまちまちな審査員に頼っているのが現状である。そのため、技を見抜く眼を持たない審判による不可解な判定が起こるのは必然である。

フィギュアスケートのように詳細な国際的審査基準があり、一定の審査技術が確立された競技でさえ、判定に疑問を呈する専門家がいるのだから、そのような基準を持たず、ほとんどが個人の資質に委ねられた居合道では無理からぬことである。居合道の性質上、個々の審査員自身の居合道の力量(過去の力量も含む)に比例した評価結果となるのが通例である。

昔日に審判員のレベルアップのための講習が実施されたことがあったが、それには少々無理があったと私は思っている。審判技術の向上させるためには、技の本質の理解を深めさせることこそが先決であり、それは即ち審判者自身の技前の向上とイコールだからである。そうでないと表面的な見た目の印象のみに頼ることになり、判定を受ける側の技も派手さや見栄え等に陥りやすくなり、本質を学ばなくなってしまう。そうした向きが何と多いことか。我々もよくよく肝に銘じるべきことで、私自身も常に自戒しているところである。

以上を踏まえ私が思う技の本質を求めるために必要と思うことをランダムに述べると次のような事項となる。

一、流派の掟による正確な形の習得

 これは、正確な寸法に基づいた文字通りの外形のことで、大枠(体勢)から固めるべきだと思う。外形というと表面的なことのように聞こえるが、正確な形には技の本質が含まれており、逆説的には、次項から示すその他の本質が整わないと正しい形が現れない。先に述べた審判の個人の印象によるうわべの見た目とは本質的な違いがある。

 例:適正な足幅・姿勢、次に切付け・打下しの際の切っ先・拳の位置等

二、間と間合いの習得

 彼我(敵と我)の適正な距離感は主に目付(目の付け所)、序破急にもいわれる遅速・緩急の会得が要る。これらは自己解釈による意味のないポーズをとることではなく、仮想敵を見据えて対敵に効果的なものでなければならない。

三、切っ先の軌道の習得

 最短・最速にて敵に切りつけるための運剣、振りかぶり、納刀のさいの運剣を研究し極力無駄を省くこと。

四、正しい目付の習得

 敵との距離を測る最も大切な要素となる。

五、技の理合い(形の意義)の習得

 技の意味を理解しないままの演武は、うわべだけの剣の舞い(素晴らしい剣舞には敬意を表しておりますので誤解なきよう願います)になってしまう。技の意義を理解するということは、目付、間と間合い、形の全てに通じる。

六、序破急の概念の習得

 何事も唐突な動作では、目的を達成するための効果は得られず、稚拙を免れない。自然の摂理に委ねた流れにより、刀勢も生まれるものであるから、全てを自分でコントロールしようと力まず、力を抜いて見えざる力に委ねることも必要。そのためには極力、自我を薄めると上手くいくかも知れない。

七、運足の習得

 足は浮足立っても、踏み締め過ぎてもよくない。足を運ぶ時も静止している時も常に床から紙一重となるように軽やかに運ぶことが大切である。

以上、一端を述べが、本質的なことは、突き詰めてみると大変シンプルなことばかである。

それらは全て誰にでも出来る単純なことばかりであるから、それにチャレンジして見ることで本質につながる道が見えてくるはずである。会水

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